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離婚するか決めかねている方・離婚をしたい方へ

未成年の子がいる場合に知っておくべきこと

弁護士中原 俊明
<監修者> 弁護士 中原俊明
離婚した場合の親権や経済面はもちろん、離婚した場合とそうしなかった場合の精神的な部分まで、弁護士が聞き手となって、過去の事例や経験をもとに、現在の心境や状況を引き出してアドバイスさせていただきます。

未成年の子供がいる夫婦が離婚する場合、知らなければならないこと、知っておくべきことがいくつもあります。ここでは、離婚をした場合、親権や養育費、戸籍や姓などはどうなるか、ひとり親家庭への支援の種類などについて説明します。

親権

親権とは?

親権とは、未成年の子供に対する監護・養育・財産管理をする権利・義務です。親権には具体的に①身上監護権、②財産管理権の2つがあります。

身上監護権は、子供と一緒に暮らして、養育・教育する権利・義務のことです。
財産管理権は、財産を管理したり、子の法律行為に同意したりする権利・義務のことです。

婚姻中は、共同親権(夫婦が二人とも親権を持っている状態)ですが、離婚をすると単独親権(父母のどちらかのみが親権を持っている状態)になります。

ところで、一般的に「監護権」と言われるのは、①の身上監護権のことです。つまり、監護権は親権の一部です。そして、離婚の際、親権と監護権を分けて定めることがあります。

親権者と監護権者の分離

親権者と監護権者は一致しているのが一般的です。ただし、親権者と監護権者を分けることもできます。

  • 親権者をどちらにするかで折り合いがつかず、子供に悪影響がある場合
  • 養育費を支払う方が親権を有し、子供の世話をする方が監護権を有する場合
  • 親権者が病気や怪我で子供の世話ができない場合
  • 親権者が海外出張などで自宅にいる時間がほとんどない場合

親権者と監護権者を分けるメリットとデメリット

メリット

親権をめぐって両者の対立が続き、なかなか離婚が成立しないケースでも、親権者と監護権者を分けることで、早期解決の糸口となることがあります。また、養育費を支払う方が親権を有し、子供の世話をする方が監護権を有すると、養育費が不払いとなる可能性が低くなります。

デメリット

子供の銀行口座を作るときなど親権者の同意が必要になる場面で、監護権者は親権者に連絡を取らなければなりません。そのため、離婚後も、親権者と監護権者との間で連絡を取ることがストレスになる可能性があります。

親権の決定

未成年の子供がいる場合、離婚の際には子供の親権者を父母のいずれにするか決めなければなりません。

協議離婚の場合は、親権も話し合いで決めます。
調停離婚の場合は、調停の中で親権者を決めますが、調停も話し合いですので、調停で決まらない場合は裁判へと移行することになります。
裁判離婚の場合は、裁判所が親権者を決めます。

裁判離婚で親権を決めるときの原則

裁判所が親権者を父母のどちらにするか決める時は、「子の利益」を重視して決定されます。「子の利益」については、主に以下の4つの原則を基準として判断されます。

「子の利益」の判断基準

  • 継続性の原則
  • 兄弟姉妹不分離の原則
  • 母性優先の原則
  • 子供の意思尊重の原則

(1) 継続性の原則

現状を維持することが子の利益になるという原則です。親権者になるためには、離婚後に学校などの生活環境を変化させない方が有利とされます。

(2) 兄弟姉妹不分離の原則

兄弟姉妹がいる家族では、兄弟姉妹が別れずに生活することが子の利益になるという原則です。このため、片方の親が全ての子の親権を持つことになるケースが多いといえます。

(3) 母性優先の原則

子の年齢が低い場合、母親を親権者にすることが子の利益になるという原則です。ただし、時代の変化もあって必ずしも母親が優先されるべきではないという考え方も強まっており、強い判断基準とはなっていません。

(4) 子供の意思尊重の原則

子の年齢が15歳以上の場合、子の意思を聞き尊重しなければならないという原則です。子の意思が絶対というわけではありませんが、重視される要素となっています。

養育費

養育費とは?

養育費とは、子どもが生活するために必要な費用のことで、衣食住の費用のほか、教育費や医療費、おこづかいなどの適度な娯楽費も含まれます。

養育費の金額

金額がいくらになるかについては、基本的には、東京家庭裁判所のホームページに掲載されている養育費算定表を用いて算出されます。
算定表では、子の人数や年齢を踏まえて、払う側の収入ともらう側の収入を比べてバランスをとった金額が算出されるようになっています。

養育費をいつまで支払うか

民法改正により成人年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、養育費をいつまで支払うかという点に関しては、実務上はこれまでどおり原則として20歳までとされています。

これは、養育費は経済的に未成熟な子に対して支払われるものであり、成人年齢が引き下げられたからといって、子が経済的に未成熟であることは変わらないためです。
ただし、養育費の終期は夫婦間の話し合いで決定することも可能であるため、父母が合意すれば18歳までとすることも可能です。
また、両親とも大学を卒業している場合は、子も大学を卒業する見込みが高いという理由から、養育費の終期を、大学卒業の一般的な時期である22歳の3月までとすることもあります。

参考リンク養育費・婚姻費用算定表(東京裁判所)

面会交流(親子交流)

面会交流とは?

面会交流とは、親権を持たない親が子と面会等することをいいます。(現在、国や地方自治体等では「親子交流」という名称が用いられていますが、裁判実務上は「面会交流」の名称が引き続き使用されていますので、面会交流と表記しております。)子と実際に会う「直接面会交流」だけでなく、電話やテレビ電話、手紙などの「間接面会交流」も認められています。

面会交流の決め方

離婚時に、どの程度の頻度で面会交流を認めるかなどについて父母間で決めておくことになりますが、一般的には「月1回程度」とだけ決め、場所や面会の方法などの詳細は実際に面会交流を行なう際に父母が連絡を取り合って決めることが多いといえます。
話し合いで決まらない場合には、調停や審判で決めることになります。

面会交流の注意点

以下の例のように、面会交流が「子の福祉に合致しない」とされる場合は認められないこともあります。

  • 子に対する暴力が原因で離婚したケース
  • 子が15歳以上で、面会交流を自分の意思で明確に拒絶しているケース
  • 面会交流を求める親が、子を連れ去る可能性が認められるケース
  • その他、親が子に危害や悪影響を与える可能性が認められるケース

子の戸籍

「結婚時に夫(父)の名字(姓)で新しく戸籍を作った夫婦が離婚し、妻(母)を子の親権者にしたケース」を例に説明します。

まず、母と父が離婚すると、結婚時に作った戸籍から母が抜けることになります。しかしこの時、子が親権者である母と一緒に自動的に父の戸籍から抜けるわけではありません。何も手続きをしなかった場合には、子の親権者は母なのに父の戸籍に入ったままという状態になります。

この状態を解消するための手続きについては、次の姓の変更のところで説明します。

子の姓

引き続き上の例をもとに説明します。

母の姓は、離婚届を作成する際に、結婚前の姓に戻すか結婚時の姓のままとするか選択することができます。(法律上は、結婚前の姓に戻るのが原則で、これを復氏と言いますが、どちらの名字にするか選べると覚えておけばよいでしょう。
しかし、親権者である母が姓を結婚前のものに戻しても、子の姓が自動的に母と同じものに変更されるわけではありません。

子の姓を変更するには、裁判所に対し、「子の氏の変更許可」の申立てをする必要があります。(子が15歳未満の場合は母が申立てます。子が15歳以上の場合は、子が自分で申し立てます。)
この申立てが認められると、裁判所から「許可審判書」をもらえるので、これを持って役所に子の「入籍届」を提出することで、子の姓と戸籍が母と同じものになります。
子を母の戸籍に入れるためには、姓を母と同じものにしなければならないため、姓と戸籍はセットで変更するものと考えておきましょう。

上記は母が旧姓に戻る例でしたが、母が婚姻中の姓を継続して名乗る場合も、子を母の戸籍に入れる場合の手続きは「子の氏の変更許可」となります。
また、離婚の際に、母の戸籍を結婚前の父(もしくは母)を筆頭者とする戸籍に戻してしまうと、そこに子を入れることはできませんから、分籍という手続きで母が筆頭者となる戸籍を作らなければならず、手間がかかります。(法律上は、母の戸籍は結婚前の戸籍に戻るのが原則で、これを復籍と言いますが、子を一緒の戸籍に入れたい場合は、離婚時に新しい戸籍を作ると覚えておけばよいでしょう。

まとめると、子の姓について離婚時に決めなければならない点は以下の3つです。

  • 離婚後の母の姓
  • 離婚後の子の姓
  • 離婚後の子の戸籍

社会保険(健康保険)の扶養

上記の例で、子が父の社会保険(健康保険)の扶養に入っていたとします。この場合、母が子を自分の社会保険の扶養に入れたいときは、父の扶養から子を外す手続きをしなければなりません。

この手続きは、以下の流れで進めます。

  • 父が勤務先に「被扶養者異動届」を提出し、「資格喪失証明書」を入手します。
  • 母が父から「資格喪失証明書」を受け取り、勤務先に、社会保険の扶養家族の申請をします。

子を父の扶養に入れたままにしておくことも可能ではありますが、この場合、健康保険関連の手続きを行なう際には父の協力が必要になります。母が父と関わりを持ちたくない場合には、子を母の扶養に入れるとよいでしょう。

ひとり親支援の活用

ひとり親家庭には、以下のような、国や市町村からの多様な公的支援があります。ただし、名称や内容、支援を受けられる要件が自治体ごとに若干違っているなど、非常にわかりづらいものとなっています。

経済支援

  • 児童扶養手当(国)
  • 児童育成手当(市町村により名称・内容は異なる)
  • ひとり親家庭対象の福祉資金貸付制度
  • 母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業
  • ひとり親家庭の医療費助成(「マル親」)

子育て支援

  • 就学援助制度
  • ひとり親家庭ホームヘルプサービス
  • 子育て短期支援事業(短期入所生活援助/夜間養護等)

住居関係

  • 公営住宅の優先入居・家賃負担減額

上記はあくまで一例ですので、詳しい内容については以下のページをご覧ください。

関連リンク 離婚後の公的支援(母子家庭、父子家庭の場合)

未成年の子がいる場合に知っておくべきこと まとめ

  • 裁判離婚で親権を決めるときの原則は?
    「子の利益」を重視して決定されます。「子の利益」は主に、①継続性の原則、②兄弟姉妹不分離の原則、③母性優先の原則、④子供の意思尊重の原則、の4つの原則を基準として判断されます。
  • 養育費はいつまで支払う?
    民法改正により成人年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、実務上はこれまでどおり原則として20歳までとされています。
  • 面会交流の決め方は?
    一般的には「月1回程度」とだけ決め、場所や面会の方法などの詳細は実際に面会交流を行なう際に父母が連絡を取り合って決めることが多いといえます。
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