離婚時に確認すること-お金のこと-

離婚時の財産分与に税金はかかる?節税できるケースについても解説

弁護士中原 俊明
<監修者> 弁護士 中原俊明
離婚した場合の親権や経済面はもちろん、離婚した場合とそうしなかった場合の精神的な部分まで、弁護士が聞き手となって、過去の事例や経験をもとに、現在の心境や状況を引き出してアドバイスさせていただきます。

離婚して財産分与をする場合、多くのケースでは税金がかかりませんが、例外的に税金がかかる場合があります。財産分与は、財産の移転を伴うものである以上、課税対象になる可能性があるものですが、一般的には財産分与に税金がかかるという認識を持っている方は少ないでしょう。ここでは、財産分与をする際の参考になるよう、離婚時の財産分与にかかる税金について説明します。

財産分与をされる側(受け取る側)にかかる税金

財産分与とは、婚姻期間中に形成した夫婦の共有財産を離婚時に分配することをいいます。分配の対象となる財産は、現金・預貯金のほかに不動産や株式などもあるため、財産を受け取る際にかかる可能性のある税金は把握しておくべきです。

贈与税

贈与税とは、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です。財産分与を受け取る側からすれば、相手から財産をもらう以上、贈与税がかかるように思われますが、原則として贈与税はかかりません。法的には「贈与」と「財産分与」は異なるものであるためです。ただし、以下の場合には、例外的に贈与税がかかります。

①分与された財産の額が不当に高額すぎる場合

その夫婦の収入などに照らして分与財産額が多すぎるケースです。この場合は、その夫婦の分与財産額の適正額を超えた部分に贈与税がかかります。

②離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合

この場合は、その財産分与は本来の目的から外れた「税金逃れ」のための行為といえるので、ペナルティとして、もらった財産すべてに贈与税がかかります。

不動産関係の税

不動産に関係する税金としては、①不動産取得税、②登録免許税、③固定資産税が挙げられます。離婚にともなう財産分与で不動産を取得した場合のそれぞれの税金の扱いは以下のようになります。

①不動産取得税

まず、不動産取得税については、原則としてかかりません。ただし、贈与税のところで説明した①②に該当するような場合や、夫婦の共有名義にしていた不動産の持分を一方に移転させる場合は不動産取得税がかかることもあり得ます。

②登録免許税

次に、不動産を受け取った後、不動産の名義変更登記をすることになりますが、その際には登録免許税がかかります。金額は、その不動産の固定資産税評価額の2%です。

③固定資産税

不動産の分与を受けた翌年以降は、固定資産税を支払っていくことになります。

登録免許税と固定資産税は、不動産の分与を受けた側が支払うことが多いですが、夫婦の話し合いによって決めておくのがよいでしょう。

財産分与をする側(渡す側)にかかる税金

財産分与をする側(財産を渡す側)は、財産分与を受け取る側よりも税金について注意しなければならないことがあります。

金銭を財産分与する場合

渡す財産が金銭である場合は、原則として税金はかかりません。例外的に税金がかかるのは、受け取る側のところで説明した①②のような「税金逃れ」とみられるケースです。これは極めて稀なケースであり、よほど悪質であることが明らかといった場合でない限り、通常は税金はかかりません。

不動産や株式を財産分与する場合

・譲渡所得税がかかるケース

「不動産や株式を取得した時の価値」と「財産分与として渡す時の価値」を比べて、「財産分与として渡す時の価値」が高い場合には、譲渡所得税がかかります。つまり、自宅を購入した当時よりも財産分与をする時点の方が自宅の価値が上がっている場合には、譲渡所得税がかかる可能性があるということです。

・財産分与の際にも譲渡所得税が発生する?

譲渡所得税は、通常は、財産を売却したことにより譲渡所得(売却したときの利益)を得た場合に発生するものです。これに対し、財産分与の場合は、売却の場合と異なり、財産を渡す側は基本的に無償で財産を渡すわけですから、譲渡所得が存在しないように思えます。

しかし、判例では、財産分与の場合であっても、上記のように財産取得時の価値より財産分与時の価値が高く、価値が上がっている場合には譲渡所得税が発生するとされています。理由を簡単に説明すると、譲渡所得税というのは、「譲渡によって実際に得た利益」に対する課税ではなく、「財産の値上がりによって財産所有者に発生した増加益(財産取得時よりも価値が増加したという利益)」に対する課税であり、その財産を手放す時にこれを清算して課税するものだから、とされています。つまり、譲渡によって実際に得た利益があろうとなかろうと、財産取得時よりも価値が上がっている場合には上記の「増加益」というのが発生しているのだから譲渡所得税を課税する、ということです。この結論に対しては、一般的な感覚では、譲渡所得税がかかることに納得できないという批判もあるでしょう。しかし、実務上はこの最高裁判例に従った運用がされているので、注意してください。

・分与する財産が株式である場合

株式は不動産と異なり価値の変動が頻繁にあり得るため、取得時より分与時の価値が高いケースもよくあります。そのため、株式を分与する場合は譲渡所得税に注意しましょう。

財産分与にかかる税金を節税できるケース

財産を渡す側の節税

上記のように、財産分与として不動産を渡す場合、譲渡所得税がかかるケースがあります。この譲渡所得税を抑えるための手段として、分与する財産が自宅不動産の場合にはいわゆるマイホーム特例という制度を利用することが考えられます。

マイホーム特例とは、譲渡所得から最高3000万円を控除できる制度であり、財産分与の際にも適用されます。そのため、財産分与時の価値から取得費等を差し引いた金額が3000万円以下である場合には、譲渡所得税は発生しないことになります。また、仮にこの金額が4000万円であったとしても、ここから3000万円を控除するので、1000万円部分についてのみ譲渡所得税を支払えばよいということになります。

ただし、マイホーム特例は、夫婦間の不動産譲渡については適用されません。そのため、必ず「離婚後」に譲渡する形をとるようにしましょう。具体的には、離婚届の提出日よりも財産分与の日を後にするようにしてください。また、この特例を受けるためには確定申告をする必要がありますので注意してください。

財産を受け取る側の節税

通常の財産分与の場面とは異なりますが、夫婦間での自宅不動産の譲渡については贈与税を課さないとする「贈与税の配偶者控除」という制度があります。いわゆる「おしどり贈与」です。これは、婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産を贈与しても2000万円までの部分は贈与税を課さないという制度です。 あくまで「離婚前」に適用される制度なので、離婚前に自宅不動産の名義変更だけでもしておきたいという場合には利用してもよいでしょう。

離婚時の財産分与に税金はかかる? まとめ

  • 財産分与をされる側に贈与税はかかる?
    原則としてかかりませんが、分与された財産の額が不当に高額すぎる場合、離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合には贈与税がかかります。
  • 金銭を財産分与する(渡す)場合に税金はかかる?
    原則として税金はかかりません。例外的に税金がかかるのは「税金逃れ」とみられるケースですが、よほど悪質であることが明らかといった場合でない限り、通常は税金はかかりません。
  • 財産分与にかかる税金を節税するための制度は?
    譲渡所得から最高3000万円を控除できるマイホーム特例や、贈与税の配偶者控除などがあります。
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