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介護を理由に離婚することはできるか日々の介護に追い詰められたら弁護士に相談を
例えば、「自分ばかりが義父母の介護をしていて、夫が全く協力してくれない。」
「義父母と仲が悪く、介護をしているのに文句を言われてストレスが溜まる。」
など、介護から解放されたいと思うことは少なくないはずです。
家族や親戚と話し合って介護の負担を減らすことができればよいですが、それができない場合、義父母の介護から解放されるために離婚したいと考えることもあるでしょう。
素朴に考えると、義理の父母とはいえ、介護から解放されたいという理由で離婚するのは認められないと思われるかもしれません。しかし、これから説明するように、決して介護を理由にした離婚が認められないわけではありません。
配偶者が離婚に同意している場合は、介護が理由でも離婚できる
配偶者が離婚に同意すれば、介護が理由であっても離婚することができます。しかし、義父母の介護を理由に離婚したいと言っても、なかなか配偶者の同意を得られないことが多いでしょう。自分からみると義理の父母でも、配偶者からみると血のつながった実父母ですから、感情的な言い合いになることも考えられます。
義父母の介護をする法律上の義務はある?ない?
ところで、そもそも義父母の介護をする法律上の義務はあるのでしょうか。結婚をした以上、義父母の介護をするのは当然だと考えるかもしれません。しかし、実は、民法には義父母の介護をする義務を直接定めた条文はありません。
介護に関係する条文としては、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」(民法877条1項)というものがあります。扶養とは、簡単にいうと、生活ができるように面倒をみることをいいます。そうすると、条文に書いてあるように、互いに扶養をする義務がある「直系血族及び兄弟姉妹」は、互いに介護をする義務があるものと考えられます。
血族とは、文字通り「血のつながりのある」という意味です。義父母は、血のつながりはないので血族にはあたりません。法律上、結婚(婚姻)によって生じた親族関係として姻族にあたります。
そうすると、この条文からは、義父母を介護する義務があるとまではいえないのです。(ただし、義父母と養子縁組をしていた場合(義父母が養父母でもある場合)には、法律上血族として扱われるため、扶養義務が生じます。)
一方で、民法の他の条文をみると、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」(民法752条)というものがあります。この条文からすると、夫(妻)が自らの実父母の介護をする場合には、夫婦として、その協力をしなければならないことにはなりそうです。しかし、これはあくまでも夫(妻)がちゃんと介護をしている場合の話です。自分だけが義父母の介護をしている場合には当てはまりません。
配偶者が離婚に同意しない場合、裁判で離婚を認めてもらうしかない
配偶者が離婚に同意しない場合には、裁判をして離婚を認めてもらうしかありません。裁判で離婚が認められるためには、法律に定められた離婚事由にあてはまる事情が必要です。ところが、法律上、「義父母の介護」は離婚事由として定められていません。
そこで、義父母の介護をすることが、法律に定められている離婚事由の一つである「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」(民法770条1項5号)にあたらないかを考える必要があります。義父母の介護の状況に加えて、夫婦の様々な事情を考慮して、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と裁判官が認めれば、裁判で離婚が認められることになります。
介護離婚を考えたら弁護士にご相談を!
介護を理由に離婚を考える方は、日々の介護に追われて、肉体的・精神的に追い詰められている状況にあることが多くあります。次第に視野も狭くなり、自分がどうしたらいいのか分からなくなることもあるでしょう。
遠慮せずに、まずはその状況を弁護士にお伝えください。弁護士は、客観的な立場で、どのようにすれば状況を改善できるかを考えます。自分の抱えている悩みを話してみるだけでも楽になることもありますし、解決の方向性が見つかれば、辛い状況から抜け出せるきっかけになるかもしれません。
介護の問題は、まずは家庭内で話し合うべきで、弁護士に依頼するのは大げさだと考える方もおられるかもしれません。弁護士に依頼するとしても、弁護士が表に出ることなく、相談者様の裏方としてアドバイスをするだけにとどめておくこともできます。
また、弁護士に依頼したからといって、必ず離婚しなければならないわけではありません。介護の問題以外では夫婦関係は良好だから、できれば離婚をしたくないという方もおられるでしょう。子どものことを考えると、義父母が原因で離婚まではしたくないという方もおられるかもしれません。弁護士は、そういった個別の事情もお聞きしながら、最良の解決策を考えていきます。介護離婚を考えるようになったら、自分だけで悩みを抱えることなく、ぜひ弁護士にご相談ください。